「いまのタイプムーンは狂っている。とにかくおかしい」
路地裏に生息するさつきたちの前に現れた男はそう言った。
男の名は衛宮士郎。型月界における人事権の片翼を担うプロデューサーである。
彼は現在のヒロイン制度に疑問を抱き、“もっとみんなが幸せになるような”ローテーション制度を主張するも、いつのまにか権力を握っていた
トップアイドルたちの策略により職を追われていたのだ。
彼はブロンズながらメイン級のヒロイン力を持つさつきに目を付け、共に戦わないかと提案する。
乗り気でないさつきだが、士郎Pをテレビ界の心臓部にまで連れて行けばシステム変更は可能だという。
シオンの口車と士郎の必死さに流され、業界の反逆者となるさつき。
“すべての出番のないヒロインのために……!”
そんなスローガンのもと、ブロンズヒロインであるさつき、シオン、リーズの三人は路地裏から旅だった。
目指すは遥かな聖域・月面テレビ十二宮。
さつきたちは襲い来るブラックヒロイン、シルバーヒロインたちを退け、
旅費のために数々のアルバイトをこなし、ついに十二宮に辿り着いた。
「やったー、ついたよー! これで私たちの旅も終わりだね!
あとは士郎さんが主人公っぽく一晩でやってくれるハズ!
ずっと正義の味方、正義の味方ってうるさかったし!」
士郎Pを送り届ければそれで解決する、と楽観していたゆるいさつき。
しかし、十二宮の入り口の前で士郎Pは謎のアサシン(ハサ子)によって暗殺される。
なんでさ、と遺言を残してあっさり倒れる士郎P。
「あちゃー。士郎さんがコロされちゃったかー。なら仕方ないなー」
今回は縁が無かったね、とゆるく帰ろうとするさつきたち。
しかしアサシン・ハサ子はさつきたちの前に立ちはだかる。
「そうはいくものかっ! 運命を改変できる今日を狙ってやってきた反逆者どもめ、十二宮には立ち入らせない!」
などと、聞かれてもいない秘密事項をのたまうハサ子。
調子に乗ってハサ子は語る。
どのようなヒロインであれ、四月一日中に十二宮を突破して最上階に辿り着けばゴールドヒロインになれるルールを。
(※なお、新ゴールドヒロインが成立した場合、既存のゴールドヒロインはランダムで降格となる)
とたんにやる気になるシオンとリーズだが、戦いを怖がるさつきは及び腰。
「そんな危ないコトはやめて、おとなしく路地裏に帰ろ?」
上目遣いでシオンを説得するさつき。
しかし時すでに遅く、鉄拳騎士リーズバイフェはハサ子を撲殺。
「きゃああーー! ヒロインにあるまじきスプラッタ!
深夜放送(午前零時)でもギリギリの容赦のなさだよー!
リーズさん、どうしてそう敵には容赦ないんですかー!?」
「だいじょうぶ、アサシンの命は人命にカウントされないから。それよりサツキ、これを見てごらん」
ハサ子から強奪した映像記録を展開するリーズバイフェ。
立体映像で映し出される十二宮最上階、テレビ局の心臓部たる大聖杯。
そこにはなんと、もう一人のトッププロデューサー・志貴がくべられていたのだ!
「み、みんな行こう……! 怖いけど、遠野くんを助けなくちゃ!」
「ゴールデン枠をゲットしながら意中の男性もゲットする……グッドです、さつき。ヒロインとはそうでなくては」
「うーん、その最終目的は同意しかねるけど、サツキがやる気になったのはいいコトかな」
「ええ、早く皆殺しにしましょう。なーにがトップアイドルですか」
「増えすぎたヒロインは整理されるのみ。セイバー系ヒロインの粛正は私の管轄です」
いつのまにか増えている頼もしい仲間たち。
“あれ、誰この人たち?”と首をかしげながらさつきたちは走り始める。
目指すは最上階、大聖杯の間。
ゴールドヒロインの座を掴むため、戦え、路地裏アイドルよ!